変形性膝関節症

膝関節は、太ももの骨である「大腿骨」とすねの骨に当たる「脛骨」をつなぐ部分です。 大腿骨と脛骨の先端は、弾力のある「軟骨」で覆われています。 軟骨が衝撃を吸収して分散させる、クッションの役割をすることで、膝関節を滑らかに動かすことができます。 軟骨は長年膝を使い続けるうちに擦り減り、表面が毛羽立ってきて滑らかさが失われてしまいます。 さらにすり減ると軟骨がなくなり、骨同士が直接ぶつかるようになるため、強い痛みが出てきます。 これが「変形性膝関節症」です。変形性膝関節症は、特に女性に多い病気です。 また、日本全国には変形性膝関節症の患者さんが2400万人以上もいるとされています。 日常生活の動作では膝に大きな負担がかかるので、膝には痛みが起こりやいといえます。 多くは「変形性膝関節症」が原因ですが、別の病気の場合もあります。 膝に痛みが生じたら、早めに整形外科を受診することが大切です。
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変形性膝関節症

■変形性関節症

関節痛の中でも特に多い病気

厚生労働省の統計調査(平成16年)結果を見ると、男性・女性ともに、55歳以上になると「手足の関節が痛む」 という症状の訴えが上位に入っています。 私たち人間の体には、多くの「軟骨」があり、軟骨は、関節内部で硬い骨と骨が直接触れ合うのを防ぐ役割と、 関節にかかる衝撃を緩和するクッションの役割を果たしています。軟骨は弾力性に富んだ柔軟な組織で、 健康な人ならば何年経ってもすり減りにくく、関節痛が出現することはありません。 たとえ軟骨が擦り減っても、軽度であれば軟骨細胞が傷んだ部分を修復します。 軟骨には血管も神経も通っていません。軟骨へは関節液が栄養を供給しているのです。 神経が通っていないため、軟骨が擦り減っても痛むことはありません。

しかし、日本には現在、軟骨の磨耗が原因となる痛みや腫れに悩む人が数多くいます。 軟骨の磨耗は、全ての関節で起こる可能性があるのですが、特に磨耗しやすい軟骨は、膝関節と腰椎の椎間板です。 軟骨の磨耗によって、痛みや腫れ、立つ・座る・歩くといった日常動作に障害が起こる病気を 整形外科では「変形性関節症」と呼んでおり、日本には現在、変形性関節症の患者が100万人以上いると いわれています。

なぜ、こんなに関節の痛みに悩まされる人が多いのでしょうか。
人間は等しく年をとります。年をとるとシワが増えたり、髪の毛が白くなったり薄くなったりするのと同様に、 軟骨も滑らかさ、軟らかさ、弾力性が失われてきます。そのため、軟骨は擦り減りやすくなり、変形性関節症になるのです。


■変形性膝関節症

変形性関節症の中でも特に多いのは、膝に慢性的な痛みが起こる「変形性膝関節症」です。 軟骨の磨耗は、全ての関節で起こる可能性があるのですが、 膝関節の軟骨には常に大きな荷重がかかるため、特に磨耗しやすいのです。 膝関節の軟骨は、加齢とともに徐々に擦り減っていき、それに伴って変形性膝関節症の症状も進行していきます。 例えば「歩き始めに痛む」など、膝を使う動作を始めるときに痛む場合は、変形性膝関節症の初期の段階といえます。 軟骨の擦り減りが進行すると、歩いているときにも常に痛みが持続するようになります。 さらに進行すると、膝の曲げ伸ばしをするのが非常につらくなり、歩くのも困難になります。

歩行困難にならないためには、歩き始めも膝の痛みを見逃さないことが重要です。 また、多くの場合、変形性膝関節症の痛みには前兆があります。 「膝が強張る」「突っ張り感がある」「何となく動かしにくい」といったもので、こうした違和感がある場合は、 すでに変形性膝関節症が始まっている可能性があります。

二足歩行を始めた人間の体はバランスをとるために、膝に最も大きな負担がかかる構造になったのです。 膝関節の痛みのために足を引きずるような歩き方をしていると、腰まで痛めてしまいます。 反対に、腰痛をかばうために体を曲げて歩いたりすると、膝を傷めやすくなります。 股関節にも、同様の相関関係があります。実際、膝の関節痛を訴える患者さんの多くが腰痛も抱えています。 また、股関節に痛みがある人も少なくありません。

変形性膝関節症の患者さんは、40歳以下では2%程度の発症率ですが、65歳以上の年代では発症率が63〜85%と急増します。 また中高年では、女性が男性の3倍程度も多く発症しているのです。 膝は体重がかかっている部分ですから、負担が大きいことは確かです。 しかし、高齢になったからといってすべての人に同じ症状や痛みが出るわけではありません。 では、変形性膝関節症はどのように起こるのでしょうか。


●変形性膝関節症の原因

関節痛の原因は加齢だけではない
加齢や肥満で膝にかかる負荷が大きくなることが原因

膝関節は、大腿骨と脛骨が接するところですが、それぞれの骨の先端は、関節軟骨で覆われています。 また、膝関節全体は関節包に包まれ、内部は関節液で満たされています。 関節軟骨には、骨にはない弾力性があり、表面は骨より滑らかです。 関節液は粘り気のある液体で、潤滑油の役割を務めると同時に、関節軟骨に酸素や栄養を供給しています。 つまり、関節は関節軟骨と関節液があることでスムーズに動く仕組みになっているのです。

関節軟骨は、加齢と共に擦り減り、柔軟さが失われていき、関節液は粘り気が少なくなくなって、 潤滑油としての働きが悪くなります。そのこと自体は、程度の差こそあれ、誰にでも起こることですが、 特に筋力が弱い人、立ち仕事などで膝を酷使する人、肥満がある人などは膝への負担が大きく、 変形性膝関節症になりやすく痛みが出やすいといわれています。 また、O脚やX脚の人などは、膝の片側に重心がかかるため、関節軟骨が擦り減りやすいことも一因だといわれています。

▼加齢
変形性膝関節症の第一の原因として挙げられるのは加齢です。 膝には、体重だけが負荷としてかかっているのではく、膝を支える筋肉の力や、ジャンプしたときなどの衝撃も加わっています。 ただ立っているだけでも、片方の膝にかかる負荷自体は体重の1.1倍になります。 平らなところを歩くときには体重の2.6倍、階段を降りるときには体重の3.5倍もの力がかかっています。 これだけの負荷が何十年とかかり続けると、軟骨が減り、半月板が痛んでいきます。 つまり、変形性膝関節症は、長生きをすれば、誰でもなる可能性があるということです。

▼肥満
体重が増えると、膝にかかる負担もそれだけ増えます。しかし、単に体重の増加だけが問題なのではありません。 脂肪の増加そのものも、変形性膝関節症を起こしやすくすることがわかってきました。 肥満になると、おなか周りを中心にして内臓脂肪が付きます。それと同時に、膝の関節の内部や周囲にも脂肪が付いてきます。 それらの脂肪細胞から分泌されるアディポカインという物質が、関節に炎症を起こし、 軟骨にダメージを与え、変形性膝関節症を悪化せる可能性があるのです。

▼運動不足
膝は、太ももの前側にある大腿四頭筋と、後ろ側にあるハムストリングという大きな筋肉によって支えられています。 運動不足によって、これらの筋肉が衰えてしまうと、膝を支える力が弱くなり、膝に大きな衝撃がかかるようになります。

▼膝のけがなど
膝の曲げ伸ばしや重い荷物を持つことの多い仕事、例えば、農業や運送業、建設業に長年従事してきた人は、それだけ膝に負担がかかるため、 変形性膝関節症を起こしやすいといえます。 また、スポーツなどで膝にけがをし、適切な治療をしないままでいた人も、変形性膝関節症に注意が必要です。 スポーツで半月板や靭帯を傷めた場合は、すぐに適切な治療を受けましょう。

▼O脚も膝の痛みを悪化させる
脚がまっすぐな状態では、膝にかかる力は、膝関節全体に均等にかかります。 変形性膝関節症でO脚だと、膝の内側にばかり力がかかります。 そのため、膝の内側の軟骨や半月板にさらに大きな負荷がかかることになります。 日本人には少数ですが、X脚がある場合は外側に負担がかかり、変形性膝関節症が進行する場合があります。

▼女性
女性の発症率は、男性の約1.5倍ともいわれています。男性に比べて膝関節を支える筋力が弱いことや、 女性ホルモンの影響などが考えられます。


■変形性膝関節症の症状

初期は動き始めるときに痛み、進行すると動作中にも痛む

▼初期の症状
起床時に、膝関節が強張っているように感じます。歩き始めなど動作を開始したときに膝関節に痛みが生じ、 動作を続けていると痛みは軽くなります。痛みが一時的であるため放置する人が多いのですが、 症状は徐々に進んでいきます。

▼進行した場合の症状
関節軟骨の磨耗が進行すると、動き始めだけでなく、動作中も痛みが続くようになります。 また、膝を動かしにくくなったり、膝に”水”が溜まるようになります。 この膝の水は、炎症によって異常に多く分泌された関節液です。 健康な人の関節液の量は2〜3mlですが、炎症が起こると20〜30mlほどにもなります。 さらに悪化すると、安静時にも痛みが生じ、歩行が困難になります。

■膝の痛みの検査

問診で症状を確認し、エックス線検査などで診断される

骨組織が壊死する病気など、変形性膝関節症と症状が似ている病気もあります。 膝に痛みがあったときは、できるだけ早く整形外科を受診し、きちんと医師の診断を受けましょう。 医療機関では、医師による問診が行われ、「痛みの程度」「痛み始めた時期」「痛むときの状況」などを詳しく聞かれます。 そのうえで、「エックス線検査」や「血液検査」などが行われ、診断されます。 エックス線写真には軟骨が写りません。半月版の異常が考えられる場合は、「MRI(磁気共鳴画像)検査」 が行われます。血液検査は「関節リュウマチ」など、他の病気との鑑別のために行われます。


■変形性膝関節症の治療

最初におこなれる治療

膝の痛みの多くは、「変形性膝関節症」が原因で起こります。膝関節は、太ももの付け根である「大腿骨」とすねの骨に当たる 「脛骨」から成ります。大腿骨と脛骨の先端は、衝撃を吸収して分散させる、クッションの役割を果たす「軟骨」に覆われています。 その軟骨が、加齢などが原因で擦り減ってしまい、骨と骨が直接ぶつかるようになるなどして膝に痛みが起こるのが変形性膝関節症です。 一旦軟骨が傷ついたり、擦り減ってしまったりすると、残念ながら正常な状態に戻すことはできません。 そのため、変形性膝関節症に対しては、痛みなどの症状を抑える治療が一般に行われます。

治療法は、大きく分けて「運動療法」「肥満の改善」「薬物療法」「手術」の4つがあります。 どの治療法を選択するかは、痛みの程度などによって異なります。 変形性膝関節症の初期の場合は、ウォーキングなどの運動療法を行って筋力をつけることで、症状はかなり良くなります。 肥満がある人の場合は、体重を減らして膝への負担を減らすことで、痛みの改善が期待できます。 運動療法や肥満の改善に取り組んでも痛みがなかなか改善しない場合は、薬を用いて痛みを和らげます。 さらに、運動療法や肥満の改善、薬物療法を続けても「歩くたびに膝が痛む」「痛みのために日常生活に大きな支障を来す」 といった場合は、手術が検討されます。

膝の痛みを和らげ、炎症を抑えるために、薬物療法が一般的に行われます。 最初に用いられるのが「消炎鎮痛薬」です。内服薬、外用薬があり、状態に応じて使い分けます。 関節軟骨や関節液の成分の1つである「ヒアルロン酸」を、関節内に注射する治療もあります。 膝の動きを滑らかにしたり、炎症を抑えたりすることで、痛みを抑える効果が期待できます。


■Q&A

▼”膝の水を抜くとくせになる”というのは本当?
膝の水(関節液)を抜いたから溜まりやすくなるわけではありません。 関節液が溜まる原因である膝関節の炎症が治まらないと、何度も溜まってしまうのです。 関節液が溜まらないようにするためには、膝関節症をきちんと治療することが大切なのです。
膝に大量に関節液が溜まると痛みが増し、膝が大きく腫れて、曲げ伸ばしにくくなります。 そのような場合は、関節液を抜いたほうがよいでしょう。 また、他の病気と見分けるために、関節液を抜いて調べることもあります。