変形性膝関節症の手術

変形性膝関節症』は、運動療法を中心とした基礎の治療を土台として、ピラミッドのように、段階的に進められます。 このピラミッドの頂上にあるのが「手術」です。 運動療法や薬物療法などをしばらく継続しても症状が改善しない場合に、手術が検討されます。 また、痛みによって「外出ができない」「階段の上り下りができない」など、日常生活に大きな支障が出ている場合にも、手術が考慮されます。 高齢者が増加する中で、変形性膝関節症の手術を受ける人は年々増えてきています。 新しい手術法も開発され、患者さんそれぞれの状態や希望に合わせて、さまざまな手術を選べるようになってきています。 主な手術継療法には、「関節鏡手術」「骨切り術」「人工関節置換術」があります。
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変形性膝関節症の手術

■手術が検討されるとき

運動などを十分に行っても症状が改善しなければ検討する

下半身を中心に筋肉を鍛える運動や、薬、装具などの保存療法を続けても、なかなか症状が改善しない場合に、手術が検討されます。 具体的には、近所に買い物にも行けなくなったなど、日常生活に支障が出てきた場合や、かなり変形が進んで足底板など装具の効果が得られなくなってきた場合、 歩行中に膝がグラグラと横揺れして不安定に感じる場合などです。
変形膝関節症の手術には、主に関節鏡手術、骨切り術、人工関節置換術の3つがあります。 一般的に、関節鏡手術は比較的軽度の場合、骨切り術は軽度から中等度、人工関節置換術は重度の膝の骨の変形にも対応できる手術です。 どの手術がよいかは、膝関節の変形の程度や患者さんの年齢、職業や生活に求めることなどを総合的に考えて、最適な方法が選択されます。


●関節鏡手術

関節軟骨などの毛羽立ちや、破片の狭まりを解消する

『関節鏡手術』はメスで大きく皮膚を切開するのではなく、膝関節内に「関節鏡」を入れて、必要な処置を行う方法です。 関節鏡は、内視鏡の一種で、細いスコープの先端に小さなカメラがついています。このカメラで関節の中を観察しながら手術が行われます。 関節鏡手術は、関節の中に散らばった軟骨や半月板のかけらをきれいに取り除くものです。 膝を動かすときに、軟骨や半月板のかけらが骨と骨の間に挟まり、強く痛むという人に適しています。 対象となるのは、関節軟骨や半月板が傷んで毛羽立っていたり、損傷した時に生じた破片が関節に挟まっているために痛みが出ている場合です。 例えば、”膝を動かしたとき、関節の中で何かが挟まって、ゴリゴリと音がして痛む”といったケースに適しています。

関節鏡手術では、膝に2〜3ヶ所の小さな孔を開けて、関節鏡や手術器具を関節内に挿入し、毛羽立ちをきれいにしたり、狭まった破片を取り除きます。 メスで膝を大きく切開する必要はなく、関節鏡や手術器具を入れるための小さな孔を開けるだけで済みます。 関節鏡を入れる孔は直径7mm程度なので、患者さんの負担が小さく、手術の痕も小さくて済み、術後の回復も早いのがメリットです。入院期間も数日です。 変形した骨自体を治すわけではなく、軟骨の擦り減りが軽度で、症状が比較的軽い、軽度から中等度の人が対象になります。 ただし、この手術では、軟骨や半月板のかけらを取り除くことはできますが、関節軟骨や半月板の損傷そのものを治療するわけではないので、 擦り減って傷んだ軟骨を修復することはできず、再び、軟骨や半月板が剥がれて、痛みが再発する場合もあります。 それを予防するために、手術後もしっかりと運動や減量にしっかり取り組むことが大切です。

◆関節鏡手術の特徴

関節鏡を入れる孔は直径7mm程度なので、体への負担が少なく、手術の後も小さくて済みます。 入院期間は2〜3日で、医療機関によっては、1泊2日で行っているところもあります。 手術後、膝の痛みはなくなります。ただ、関節軟骨や半月板の損傷に対する治療を行うわけではないので、再び症状が現れる可能性があります。 それを予防するために、手術後もしっかりと運動療法や体重管理を継続することが大切です。


関節鏡手術

●手術A骨切り術

変形した骨の形を整え、負荷の片寄りを改善する

骨切り術は、すねの骨である脛骨を切って脚の形を矯正する方法です(下図参照)。 変形性膝関節症が進行していて、O脚が進んでいる場合に検討されます。 O脚になっている人は、膝の内側に負荷がかかり、関節軟骨が磨り減りやすくなっています。 そのため、病状が進行すると膝の内側の骨同士が直接ぶつかり合い、強い痛みが生じます。 その場合には、「骨切り術」が行われます。 手術法の一例としては、脛骨を切って楔状に広げ、そこに人工軟骨などを移植して変形した関節の形を整えます。 関節の内側に集中していた負荷が外側にかかるようになり、痛みが出なくなります。

◆骨切り術の特徴

骨は再生力の強い組織なので、切ること自体に問題はありません。 ただ、人工的に骨折させているのと同じなので、回復には時間がかかります。 日常生活に戻るまでに2〜3ヶ月かかり、その間は松葉杖を使うことになります。 高齢者にはリハビリテーションなどの負担が大きいため、一般的に60歳以下の人が対象になります。 完全に回復した後は、ランニングやハイキングなどの激しい運動や、農作業などの労働もできるようになります。 一方で、O脚を矯正するため、手術後は脚の形がこれまでと逆のX脚になります。 脚の見た目が変わり、美容上の問題が生じることもあります。

骨切り術



●手術B人工関節置換術

膝関節の損傷部分を取り除き、人工関節に置き換える

人工関節置換術は、骨の一部と関節軟骨を、「人工関節」に置き換える方法です。 病状がかなり進行しているような場合に検討されます。 手術後のリハビリテーションを行う意欲がある人なら、受けられる年齢に制限がありません。 また、現在行われている人工関節置換術では、手術後15年までに95〜98%の人で再手術を必要とせず、耐久性にも優れています。 現在は素材の進歩などによって、耐用年数は20〜30年ほどあると考えられています。 このことから、以前は主に高齢者が対象だったこの手術も、近年は若い人にも適応されるようになり手術の件数は増えてきています。、

◆人工関節置換術の特徴

手術翌日から膝に全体重をかけて歩くことができます。手術後は痛みが大きく改善するだけでなく、 O脚が改善して足が真っ直ぐになることも利点の一つです。ただ、膝が曲がる角度が制限され、多くの人は正座ができなくなります。 急な階段の上り下りや、自転車こぎが困難になる人もいます。 ジョギングやエアロビクスなど膝に大きな衝撃がかかる運動は避けたほうがよいですが、ゴルフや水泳などは可能です。


人工関節置換術



■手術後のリハビリテーション

徐々に運動を行っていき、自分で歩ける状態を目指す

手術後のリハビリテーション 日常生活の質をよくするには、手術後のリハビリテーションが大切です。 人工関節置換術を例にとると、手術の傷口が落ち着いたら、膝の曲げ伸ばしなどを始めます。 約1ヶ月間の入院期間中、歩行や階段の上り下りの練習などを毎日行い、杖をつきながらも、自分で歩いて退院します。 退院後は、通常の生活を送ることがリハビリテーションになります。 痛みが無くなり、さまざまなことができるようになるので、積極的に活動しましょう。