膝痛の炎症を抑える治療「手術療法」

薬物療法や運動療法などを行っても、膝の痛みが治まらない場合に検討されるのが、『手術療法』です。 主に3つの方法がありますが、膝関節の状態だけではなく、年齢や、手術後の生活なども含めて考慮したうえで、手術の方法を選択します。
(*本文は下の方にあります)


炎症を抑える治療「手術療法」

症状だけでなく、年齢、生活環境などを考慮して選択する

「運動療法」や、薬物療法・日常生活の工夫などの 「保存療法」を行って痛みに対処しても、 耐えられない痛みが長年にわたって続いたり、我慢できる程度の痛みでも、将来、明らかに悪化することが 予想される場合は、手術が勧められることがあります。 また、膝が痛いからといって動かさないでいると、症状が進行して筋力や骨が弱り、寝たきりにつながる恐れもあるので、 日常生活に支障を来たしている場合には、手術療法が考慮されます。

手術には、いろいろな方法があります。選択の1つの基準は、痛みの状態、軟骨の磨り減っている部位や程度、 膝の変形の進み具合など、膝関節の状態です。そのほか、年齢や、仕事などの生活環境、スポーツをしたいかどうかなど、 さまざまな面を考慮に入れて選択します。 手術を受けるに当たっては、担当医に勧められるままに手術を受けるのではなく、患者自身の意思が大切です。 手術を勧められたら、まずは「手術を受けないとどうなるのか」を担当医によく聞きましょう。 ”仕事を続けたい””スポーツをしたい”など、「自分が手術後にどのような生活を送りたいのか」を考え、 それに適した最もよい方法を選ぶとよいでしょう。


■手術の方法

症状や進行状態などにより主に3つの方法がある

手術の方法はさまざまありますが、大きく、「関節鏡を使った手術」「脚の形を変える手術」「人工関節に置き換える手術」の3つに分けられます。

●関節鏡を使った手術

炎症の主な原因は、「関節軟骨の破片」や「半月版の損傷」です。 そこで、特殊な器具を使ってこれらを取り除き、痛みを軽減する手術が行われます。
膝に5mm〜10程度の孔を2〜3ヶ所開け、関節専用の内視鏡である「関節鏡」と手術器具を入れて、 関節鏡で映し出される映像をモニターで見ながら、手術器具で関節軟骨や半月版の毛羽立った部分を切除したり、 痛みの原因となる軟骨の破片を取り除いたり、破片ができるのを防いだりします。 大きく切開しないので入院は2〜3日間で済み、社会復帰が早いのが特徴です。 傷跡が小さく、術後の痛みが比較的小さいという利点もあります。

◆関節鏡を使った手術の対象となる人

まだ関節軟骨の磨耗がそれほど進んでいない、70歳くらいまでの人に適しており、痛みを改善する効果が期待できます。 また、「エックス線検査」や「MRI(磁気共鳴画像)検査」などで、膝関節の中に関節軟骨や骨のかけらが見つかり、 それが炎症の原因と考えられる人が対象になります。半月版が切れて膝関節の内部で引っ掛かっている人や、 骨の変形(骨棘)があって膝が十分に伸ばせない人なども対象です。


●骨切り術

脛骨を切って脚の形を変える手術(頚骨の一部を取り除く手術)

変形性膝関節症では、膝関節の関節軟骨のうち、外側は問題がないのに内側が偏って磨り減り、O脚が進んでいるケースが多く見られます。 このような場合、脛骨の一部を楔形に切り取って関節の角度と形を変えてO脚を矯正し、膝関節の内側にかかる負担を軽減する手術が検討されます。 軽度から中等度の変形膝関節症で、O脚で膝の内側に痛みがある場合に行われます。 自分の関節が残るため、人工関節に比べて、手術後も膝を曲げ伸ばしするときの本来の感覚が保たれます。 ただし、軟骨が広い範囲で擦り減っている場合や、関節の可動域が狭い場合、O脚の程度がかなりひどい場合には、骨切り術は行えません。

手術で入れた人工骨は3〜4年で大半が吸収され、自分の骨と置き換わっていきます。 金属製のプレートとスクリューは1〜2年後に取り除くことが多いです。 入院期間は1ヵ月〜1ヵ月半程度、術後しばらくは松葉杖を使うことになります。 膝を曲げ伸ばししたり、歩いたりといった日常生活に戻るまで約3ヶ月かかります。 もともとスポーツをしていた人では、さらに3ヶ月ほど訓練すれば、スポーツを再び楽しむことも可能でしょう。 ただし、手術後も膝関節の老化は進むため、将来的に外側の関節軟骨も障害されてくる可能性はあります。 膝に違和感がなく、満足できる状態が続くのは手術後10年程度と考えられています

◆骨切り術の対象となる人

膝の内側の磨耗が強く、外側の関節軟骨は比較的保たれている人が適しており、年齢としては、40〜60歳代の比較的若い人が対象です。 また、スポーツをする人や農業・漁業などで膝をよく使う人など、日常生活の活動性が比較的高い人に向いています。


●人工関節置換術(人工関節に置き換える手術)

傷んだ軟骨や骨の表面を削り、人工関節に置き換える

障害された膝関節をコンピュータのガイドで傷んだ軟骨や骨を正確に削り、人工関節に置き換えます。 関節全体を人工物に置き換えるのではなく、変形した骨の表面を削り、そこに金属製の部品をかぶせます。 金属製の部品の間には、ポリエチレンでできたクッション役の部品を入れます。 入院期間は3週間〜1ヵ月程度で、手術の翌日から膝に全体重をかけることができ、通常の歩行練習を始めることができます。 痛みが起こる部分を人工関節に置き換えるため、ほとんどの場合、痛みをとるという意味では確実な効果が得られます。 O脚も矯正されるので、バランスよく歩くこともできます。

手術後は痛みがなくなります。歩行や椅子を使った生活は問題なくできますが、小走りやしゃがむなどの動作は難しくなります。 旅行に行ったり、ゴルフや軽めのテニスなど、のんびりとスポーツを行ったりする分には問題ありません。 ただし、人工関節は飛んだり跳ねたりした時の衝撃に弱いので、ジョギングや激しいスポーツは控えることになります。 また、膝を完全に曲げることができないので、正座など深く膝を曲げる動作ができなくなります。 正座ができる人工関節もあるのですが、基本的には正座などの膝を深く曲げる動作をすることが難しいと考えた方がよいでしょう。 元の生活に戻るというより、痛みをとって快適な生活を取り戻すことが一番の目的です。 人工物を体内に入れるので、手術中に血栓ができたり、手術後も人工関節の部分に感染が起きたりして、 重い合併症を起こす危険性があります。また、磨耗や破損などが起こることもあるため、手術後は定期的に検査を受け、人工関節の状態をチェックします。

◆人工関節に置き換える手術の対象となる人

残念ながら、一度磨り減った関節軟骨を元通りにすることはできません。 そのため、人工関節置換術は、関節軟骨がほとんどなくなって膝関節の変形が進み、骨の変形が強くO脚がかなり進んでいる人や、 骨と骨がぶつかっているような重度の変形膝関節症の人、強い膝の痛みのために日常生活に大きな支障を来たしている人、 関節鏡を使った手術や頚骨の一部を取り除く手術では痛みの改善が期待できない場合、などが対象です。 人工関節の素材である金属やポリエチレンの耐用年数は20〜30年ですが、できるだけ再手術を避けるため、主に60歳以上の人に行われます。 ただし、若い人でも他に方法がない場合は、人工関節置換術が行われることがあります。

【関連項目】:『人工関節置換術』


■手術の注意点

どの手術であっても、手術中や手術後に、合併症が起こる可能性があります。 例えば、手術中や手術後に長時間足を動かさないため、血流が滞って血栓ができ、 それが肺などの血管を詰まらせることがあり、こうした合併症は命に関わる症状を引き起こす可能性があります。 また、手術後に「感染症」が起こることもあり、特に人工関節に置き換える手術を受けた場合に多く見られます。 「膝が赤く腫れる」などの症状が現れたら、すぐに担当医の診察を受けてください。


■手術後の注意

手術後、手術による傷の痛みなどが治まり、元の生活に戻るまでは、通常3〜6ヶ月はかかります。 また、手術を受けても、膝周囲の筋肉や腱などの柔軟性が取り戻せるわけではありません。 したがって、手術後も、膝関節の柔軟性を高める運動を行っていくことが大切です。 手術は、膝の痛みを全て解決する、万能の治療法ではありません。 症状の改善や進行予防のためには、自分でできる対策を続けていくことが大切です。


■Q&A

▼変形性膝関節症の最新の治療法は?
一度損傷した関節軟骨を元通りに治すのは難しいのですが、 多くの研究機関で関節軟骨を修復するためのさまざまな研究が進められています。
例えば、まず患者の軟骨を採取して特殊な方法で培養し、 培養した軟骨組織を関節軟骨がかけた部分に移植することで、関節軟骨を修復する方法があり、 治療後は、1〜1ヵ月半程度で体重を膝にかけて歩けるようになります。 ただしこの治療法は、60歳以下の人で、関節軟骨が一部だけ磨り減っている人が対象で、 まだ一部の医療機関でしか行われていません。 しかし今後は、実施する医療機関が徐々に広がっていくことが期待されています。