変形性膝関節症の手術「人工関節置換術」

変形性膝関節症の手術で最も多く行われているのが人工関節置換術です。 人工関節置換術とは、変形性膝関節症が進行した膝関節の骨の一部を削り取って、「人工関節」をはめ込む手術です。 人工関節置換術は、変形性膝関節症の痛みを取り除く効果が最も高い手術とされています。 膝の痛みが改善されれば、散歩や買い物などにも気軽に出かけることができるようになるので、患者さんの生活は大きく改善できます。 人工関節は、主にチタンなどの合金でできており、軟骨に当たる部分はポリエチレンでできています 滑らかに動かすことができるので、膝の曲げ伸ばしをスムーズに行うことができます。 一般に人工関節は、およそ20年以上使用できると考えられています。しかし患者さんの中には、手術から20年以上たっていても 何の問題もなく使い続けている人もいます。 人工関節置換術を受けた場合の入院期間はおよそ1ヶ月ですが、個人差があります。治療に対する意欲が非常に高く、 手術後のリハビリテーションに熱心に取り組むような患者さんの場合、手術後3週間未満で退院できることがあります。
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変形性膝関節症の手術「人工関節置換術」

■人工関節に置き換える手術の対象となる人

残念ながら、一度磨り減った関節軟骨を元通りにすることはできません。 そのため、人工関節置換術は、関節軟骨がほとんどなくなって膝関節の変形が進み、骨の変形が強くO脚がかなり進んでいる人や、 骨と骨がぶつかっているような重度の変形膝関節症の人、強い膝の痛みのために日常生活に大きな支障を来たしている人、 関節鏡を使った手術や頚骨の一部を取り除く手術では痛みの改善が期待できない場合、などが対象です。 人工関節の素材である金属やポリエチレンの耐用年数は20〜30年ですが、できるだけ再手術を避けるため、主に60歳以上の人に行われます。 ただし、若い人でも他に方法がない場合は、人工関節置換術が行われることがあります。


■人工関節置換術を検討するポイント

運動療法や薬物療法などによる治療を行っても効果がなく、痛みが持続する場合に人工関節置換術が検討されます。 また、軟骨が大きくすり減っていて骨と骨が直接ぶつかっている場合や、痛みで歩くこともままならず、日常生活に支障を来している場合にも検討されます。 そして、手術後にどのような生活をしたいか、という患者さんの治療に対する意欲も手術を検討するうえで大きなポイントです。 例えば手術後に「積極的に散歩したい」「旅行に行きたい」といった目標などがあるかどうかを確認します。 ただし、次のような病気がある場合は、人工関節手術を受けられないこともあります。

▼重度の糖尿病
重い糖尿病があると、免疫の働きが低下して、細菌やウィルスなどに感染しやすくなります。 人工関節は細菌などが感染しやすいため、重い糖尿病がある場合は手術が難しくなります。

▼化膿性関節炎
関節の内部に細菌感染が起こり、関節内が化膿する病気です。人工関節は感染症に弱いので、 化膿性関節炎の起こっている膝に人工関節をはめ込むことはできません。

▼認知症
手術後はリハビリテーションを継続していく必要があります。 認知機能が低下していて、そうした説明をしても理解出ない場合は、人工関節置換術を行うことができません。

人工関節置換術は、かなり高齢の患者さんでも、治療に対する意欲があれば受けることが可能です。 ただし、高齢者はさまざまな病気があることが多いので、治療に対する意欲を確認するとともに、 全身の状態をしっかり評価して、手術を行えるかどうかを決めていきます。


■人工関節置換術(人工関節に置き換える手術)

傷んだ軟骨や骨の表面を削り、人工関節に置き換える

障害された膝関節をコンピュータのガイドで傷んだ軟骨や骨を正確に削り、人工関節に置き換えます。 関節全体を人工物に置き換えるのではなく、変形した骨の表面を削り、そこに金属製の部品をかぶせます。 金属製の部品の間には、ポリエチレンでできたクッション役の部品を入れます。 入院期間は3週間〜1ヵ月程度で、手術の翌日から膝に全体重をかけることができ、通常の歩行練習を始めることができます。 痛みが起こる部分を人工関節に置き換えるため、ほとんどの場合、痛みをとるという意味では確実な効果が得られます。 O脚も矯正されるので、バランスよく歩くこともできます。

手術後は痛みがなくなります。歩行や椅子を使った生活は問題なくできますが、小走りやしゃがむなどの動作は難しくなります。 旅行に行ったり、ゴルフや軽めのテニスなど、のんびりとスポーツを行ったりする分には問題ありません。 ただし、人工関節は飛んだり跳ねたりした時の衝撃に弱いので、ジョギングや激しいスポーツは控えることになります。 また、膝を完全に曲げることができないので、正座など深く膝を曲げる動作ができなくなります。 正座ができる人工関節もあるのですが、基本的には正座などの膝を深く曲げる動作をすることが難しいと考えた方がよいでしょう。 元の生活に戻るというより、痛みをとって快適な生活を取り戻すことが一番の目的です。 人工物を体内に入れるので、手術中に血栓ができたり、手術後も人工関節の部分に感染が起きたりして、 重い合併症を起こす危険性があります。また、磨耗や破損などが起こることもあるため、手術後は定期的に検査を受け、人工関節の状態をチェックします。


■手術後に気を付けること

感染や転倒・骨折防止により、人工関節機能を守る

手術後は次の点に注意します。

▼感染
人間の体にとって異物である人工関節は感染に弱いので、細菌などによる感染症に注意が必要です。 手術を受けた部位とは異なる場所に傷ができた場合でも、きちんと消毒をして、血液を介して細菌が感染しないようにすることが 必要です。

▼転倒・骨折
転倒して人工関節を支えている骨が折れると、人工関節の機能が失われます。 転倒・骨折を防ぐために、手術後は筋肉を鍛えることが大切です。

■リハビリテーションの継続も大切

”手術を受けたから、もう大丈夫”と安心せず、手術後は生活習慣や肥満に注意するとともに、太ももや脛などの膝の周りの 筋肉を鍛えることが大切です。手術で痛みが改善されれば、ウォーキングもしやすくなります。 手術後は膝の筋肉の周りの筋肉を鍛えるとともに、リハビリテーションの1つとしてウォーキングも継続していきましょう。


■新しい単顆型人工関節

膝関節全体ではなく、内側か外側のどちらか一方だけ状態が悪い場合には、従来型の人工関節の1/3ほどの大きさの単顆型人工関節 が適応になります。 従来の人工関節よりも手術の傷跡は小さく、膝関節を安定させる役割がある前十字靭帯を切らずに済むため、より自然な膝の動きが残り、 違和感も少ないというメリットがあります。単顆型人工関節の普及により、これまで骨切り術の対象だった人が、 単顆型人工関節の手術を受ける例も多くなっています。
単顆型人工関節の耐久性は従来の人工関節に劣るとされていましたが、現在では技術が進み、徐々に向上しています。 もし不具合が生じた場合には、途中で従来型の人工関節に切り替えることも可能です。