スポーツ外傷

スポーツ時に、急激に強い力が膝に加わることで起こる怪我を、『スポーツ外傷』といいます。 膝でよく起こるのは、「ジャンプ」「着地」「急な方向転換」「タックルやブロックなどでのほかの選手との衝突」などを原因とするものです。 種目では「サッカー」「バレーボール」「バスケットボール」「スキー」「野球」などでよく起きます。 スポーツでの怪我というと、激しくプレーする若い世代に起こるものと考えがちです。 確かに、スポーツ外傷は10〜20歳代の若い人たちに多いのですが、最近は、サッカーやバレーボールなどを楽しむ中高年にもよく見られます。 膝のスポーツ外傷はいろいろありますが、代表的なものに「半月板損傷」と「靭帯損傷」があります。 スポーツ外傷は中高年に少なくない怪我です。症状と治療法を知っておきましょう。
(*本文は下の方にあります)




スポーツ外傷

■半月板損傷

裂けた半月板が周囲の組織を刺激して痛みを生じる

半月板は大腿骨と脛骨の間にある軟骨の一種で、膝への衝撃を緩和する役目があります。 上から見ると、半月形、あるいは三日月を太くしたような形状で、左右2つあります。 スポーツ時、膝に強い力がかかり、この半月板が縁に沿って避けたり、横に裂けるなどの傷を負うのが『半月板損傷』です。 裂けた半月板が周囲の組織を刺激して炎症が起き、痛みが生じます。刺激で関節液が増え”膝に水が溜まった”状態になり、痛みが出ることもあります。 半月板が損傷したままスポーツを続けると、半月板の破片などが関節軟骨を削ってしまいます また、衝撃を和らげる機能も低下し、関節軟骨が磨り減りやすくなります。 その結果、「変形性膝関節症」を起こしやすくなります。

●ロッキングが起こることも

重度の場合、「ロッキング」が起き、膝の曲げ伸ばしがしづらくなったり、激しい痛みが生じ、 歩行が困難になることもあります。ロッキングとは、半月板の縁にそってできた裂け目が大きく広がり、 半月板の一部がずれて、関節に挟まってしまった状態です。

●半月板損傷の治療法

軽度の場合は少しずつ関節を動かし、徐々に筋肉トレーニングを始め、ジョギングなどの運動を行います。痛みと腫れが治まれば、スポーツに復帰できます。 運動を行っても症状が改善しない場合や、ロッキングの場合は、「関節鏡手術」が行われます。 関節に挟まった半月板を元の位置に戻し、損傷部分を縫い合わせるなどします。 関節鏡手術は、皮膚を大きく切開する必要がなく、体への負担は比較的軽くて済みます。 約1時間で手術は終わり、入院は数日です。退院後の日常生活にはほぼ支障がなく、1〜2ヶ月でジョギングなどの運動ができるようになります。 ただ、スポーツに復帰できるようになるまで、通常は3ヶ月以上、場合によっては半年から1年ほどかかります。


半月板損傷

■靭帯損傷

靭帯が傷ついたり断裂して、激しい痛みが現れる

「靭帯」は、骨と骨をつないでいる強靭な組織です。 スポーツ時などに靭帯が傷ついたり、完全に断裂してしまう怪我を『靭帯損傷』といいます。 膝関節には、4本の靭帯があります。関節の左右両側にある「内足側側副靭帯」、 「外側側副靭帯」、関節内にある「前十字靭帯」「後十字靭帯」の4本です(下図参照)。 これらの靭帯が大腿骨と脛骨をしっかりつないでいるため、激しい運動をしても関節が安定しています。 損傷する頻度が最も高いのは「内側側副靭帯」で、次に高いのが「前十字靭帯」です。 治療法はそれぞれ異なります。

●内側側副靭帯損傷の治療法

タックルなどで他の人と衝突したり、スキーで膝が内側に入った時の衝撃などが、怪我の原因になります。 ただ、内側側副靭帯は治りやすく、それほど大きな問題にはなりません。 3〜4日間、膝を冷やして圧迫固定し、曲げ伸ばしの練習を行います。痛みが無くなったら、少しずつ運動を始めます。

●前十字靭帯損傷の治療法

前十字靭帯の損傷直後は痛みで歩行が困難になり、通常スポーツ活動を続けることはできません。 しばらくすると靭帯の断裂部分からの出血により膝関節が腫脹し、関節の曲げ伸ばしに支障が生じます。 関節内に真っ赤な血液が溜まった時は前十字靭帯損傷が強く疑われます。 通常は損傷後3〜4週間で膝関節の腫れや痛みは少しずつ和らいで、日常生活にも大きな支障を感じなくなり、 怪我が治ったと感じてしまうことさえもあります。しかし、実際には靭帯の損傷が治ったわけではありません。 この状態でスポーツを行うと、膝関節がガクッとずれる”膝崩れ”を起こして、疼痛が生じ満足にスポーツ活動を行うことができません。 ひどい膝崩れの場合には関節軟骨や半月板などをさらに傷めてしまう危険性があり、 最初の痛みのときに、すぐ整形外科を受診することが重要です。

前十字靭帯が断裂した場合、縫合しても成績はよくありません。そのため、治療では、新たな靭帯を作る「再建手術」が行われます。 膝関節の前部を覆う膝蓋腱やハムストリングスの一部を切り取り、代わりの靭帯を作ります。 入院は1週間から10日ほどですが、移植した組織が関節内で正常に機能し、スポーツに耐えられる強度になるまでに時間がかかります。 ジョギングや筋力トレーニングなどの軽い運動ができるまでに約3ヶ月、スポーツの基礎練習を始められるまでに約半年、 試合に出場するなど、スポーツに復帰できるまでには8ヶ月以上かかります。


靭帯損傷

■予防のために

基礎練習や準備運動を怠らないようにする

スポーツ外傷を完全に予防することは難しいのですが、起こる可能性を低くすることは十分にできます。 スポーツをするときは、いきなり試合に出たりせず、基礎練習で基本的な動作をしっかりと身に付け、 強度は徐々に上げるようにしてください。毎回、準備運動を入念に行いましょう。 運動後のクールダウンも大切です。そして、疲労が蓄積しているときは、無理を避けるようにしましょう。